八島湿原便りでは
八島ヶ原湿原のライブ映像や
定点写真,
気象観測データや花暦などを通して,
八島ヶ原湿原を中心とした地域の最新情報をお届けしています。
標高1630m〜1797m。長野県のほぼ中央、3000ヘクタールの大草原が広がる霧ヶ峰高原の北西部に位置する八島湿原一帯は自然のたいへん豊かなところです。中でも日本を代表する高層湿原である
八島ヶ原湿原はその重要性を早くから認められ、1939年(昭和14年)に国の天然記念物の指定を受けました。また国の文化財としても登録されました。
12.000年の歴史を持つ湿原の主役ともいえるミズゴケの種類は18種にのぼり八島ヶ原湿原の約490倍もある日本最大級の釧路湿原とほぼ肩を並べています。
総面積は43.2ヘクタール、泥炭層は8.05mに達しています。低層部分はヨシ、アゼスゲ、カサスゲなどで成立しているヨシ・スゲ泥炭。中間はオオミズゴケ、ワラミズゴケなどで成立しているヌマガヤ湿原。高層部分はイボミズゴケ、チャミズゴケ、ムラサキミズゴケ/ワタスゲ、ミカヅキグサ/ツルコケモモ、ヒメシャクナゲなどで構成されているミズゴケ湿原です。
人間にたとえれば100才を超えている八島ヶ原湿原は周辺の森林化や
降雨量の減少などに伴い乾燥化が進んでいますが、周囲にはこの地で発見され「キリガミネ」と名のつくものを含め年間約360種類もの
植物が開花し草原に彩りを添えています。また、当然のことながら豊かな環境はさまざまな
生き物たちを育み続けています。
八島ヶ原湿原については、八島湿原駐車場に隣接する町立の
八島湿原ビジターセンターが、インタープリターと歩くガイドウォークなどを通して八島ヶ原湿原やその周辺の自然を分かりやすく紹介しています。
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湿原の保護・保全対策については研究者の方々から多くの提言をいただいており、それらをどのような形で実現していくのかが今後の大きな課題になっていますが、
ビーナスライン沿線の保護と利用のあり方研究会の提言を尊重し実行に移すことによって研究者の方々の貴重な提言内容を実現可能にすることができると考えています。
私たちは
八島ヶ原湿原の大切さを多くの方々に知っていただくために動植物や鳥・昆虫・気象などの調査研究を行っています。その結果は「八島湿原便り」を通して発表し現在がどのような状態であるのかを誰でも正確に把握できるようにしています。また新たな情報を頂きながらより良い保護管理策を模索しています。そして実現可能なものを実現できるような環境作りを目標に努力しています。
八島ヶ原湿原のライブ映像はまさしく現状を伝えているものの一つでがその傍ら1週間毎に湿原内の亀裂の写真を撮っています。写真を見て乾燥化の進み具合や亀裂の消長を目で確認できるようになることに期待を寄せいています。
自然の定義は様々でありまた価値観は十人十色です。貴重である根拠のデータを示すことも大切ですが自然はすばらしいということを感じる力、感受性を豊かにすることも大切だと思います。
私たちは非日常的な自然を身近のものとして感じていただけるように自らの体験に基づいた言葉で紹介することを心がけています。霧ヶ峰に関わりのある方々そして遠方よりお越しいただいた方々が霧ヶ峰の自然に接することによって心の緊張が解きほぐされお互いを目的として認め合うことができるようになることを望んでいます。
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春、山あいからキツツキのドラミングが響きわたり虫たちが動き始めると次々に夏鳥が訪れ、さえずりを競いながら新しい家族との暮らしを始めます。目に痛いほど艶やかな新緑にコロコロコロと鳴き交わすシュレーゲルアオガエル。花見の人々に騒がれることもなく霧の中で静かに満開を迎えるズミの花。
短い夏には色とりどりに生命のエネルギーが満ちあふれ、人々の心も沸き立ちます。
草紅葉やススキの輝きは祭りの後の寂しさというより、むしろほっとした穏やかな秋の表情といえるでしょう。夕空が黄金色に染まるのもこの頃です。
日ごとに下がっていく気温、深くなる雪。それでもクリスマスが過ぎると太陽は再び力を取り戻し、動物たちを春へと導きます。彼らの気持ちまで伝えてくれる雪上のフィールドサインは厳しい冬の特別なプレゼントかもしれません。
夕暮れの静けさの中、時々出会う野生動物はじっとこちらを見つめてから走り去ります。そのまなざしは人間も多くの動物の中の一つの種類なのだと、一瞬にして気づかせてくれる不思議な力を持っているのです。